合格者インタビュー「再受験は、安易には勧められない」(富山大学医学部 合格)

Aさん(静岡高校、千葉大学法経学部※卒)※現法政経学部
2025年度入試で富山大学に合格。塾長の山﨑が担任を務める

現役生のときは、医学部を受験しませんでした

Aさん:父が医師なので、身近にある職業ではあったんです。ただ、現役のときは、医師になる明確な理由がありませんでした。

父の心臓血管外科医としての猛烈な働き方を見ていたこともあります。夜の0時に帰ってきて、晩ごはんを食べて入浴を済ませて寝ようかというときに、呼び出されてまた病院に行くというような(苦笑)。小学生のときは、平日はほとんど父と顔を合わせなかったほどです。その働き方を見ていると、自分ができるかどうか自信がありませんでした。

あと、高校3年生のときに行った、大手予備校の夏期講習で、「覚悟のないやつは医者になるな。人を殺す」と言われたんです。確かになと思いました。怖気づいたのかもしれません。なので、文転して、千葉大学の法経学部に進学しました。

なぜ工学部など、理系学部を目指さなかったのでしょうか

Aさん:特別理系学部の何かに興味があるというわけではなかったので。あと、命を扱うのでなければ、次はお金を扱ってみたいかなと。お金の勉強をしようと思って経済学部にしました。

そして、就職します

Aさん:身近な先輩に、銀行に就職した人がいて、内定を頂くこともできたので、入行しました。現在32歳なのですが、30歳までの8年間、働きました。

なぜ、ここから医学部受験に向かうことになるのでしょうか

Aさん:30歳を迎えるに当たって、「働き方はこのままでいいのかな」と考えたことが、最初のきっかけです。せっかくなので、生涯自信をもって、誇りをもってやり抜ける仕事ってなんだろうなと考えたときに、現役の時に受けなかった医学部というものが、心に残っていました。

インターネットや本などで、勉強法の情報が手に入るようになって、「現役のときは勉強法をぜんぜん知らなかったな」と思ったんです。これだけ情報が手に入りやすくて、勉強法も確立されているんだったら、私もできるかなと。

また、お金を扱う仕事をしている中で、健康を犠牲にしながら働く経営者の方が、すごく多かったんです。頻繁に通院していたり、身体のここが悪い、あそこが悪いと言いながらお金を稼いでいる経営者を見ていると、やはり命、健康に代えられるものはないなと。お金よりも健康だなと思うようになりました。

加えて、銀行に入った動機の一つに、漠然とですけど「人の役に立ちたい」という思いがありました。銀行に入って、いろんなお客様とお会いする中で、目の前の人の不安を解消してあげたいと、思いが具体性を帯びてきたんです。そして、一番不安になることはなんだろうと考えたときに、健康を害したときだろうと。じゃあ、その不安を取り除いてあげられる医師になろうと思いました。

将来は、不安な人が最も飛び込んでくる救急で、患者さんの力になれればと考えています。父のように多忙になるだろうということは容易に想像ができましたが、それを差し引いてもかける価値のある仕事だと思いました。

医学部を目指すにあたって、最初にしたことは

Aさん:まずはYouTubeで動画を見たり、本屋で書籍を買ってきて、勉強法を調べました。ある程度、勉強法が分かったところで、参考書を買い揃えて、解き始めたという流れです。最初は働きながら、自学を進めていきました。自習室を契約して、平日は3〜4時間、休日は7〜8時間くらい勉強していました。その状況が8カ月くらいですかね。

自学に手応えは感じていたのでしょうか

Aさん:やると決めちゃったので、「こんなのあったな〜」と思いながら、無我夢中で勉強していました。懐かしさを楽しんでもいました(笑)。ただ、8カ月勉強を続けた結果、このままの勉強の仕方ではダメだろうと思いました。さすがに量が足りないのではと。そこで、2022年の11月に退職しました。

かなり思い切った決断だと思うのですが

Aさん:私は、楽観的なところもあるので、午前中くらいはアルバイトして、午後をまるまる勉強時間に当てれば、10時間は確保できるし大丈夫かなと思っていました。実家住まいなので、生活費の負担や食事の手間をあまり考える必要がなく、そういった意味では環境に恵まれていました。

アルバイトはフリースクールで子どもたちに勉強を教えていました。勉強時間が増えて、やれることも増えたので、純粋に勉強がはかどりました。勉強量も確保できるようになりました。やはり量は大事なので。その生活が、工藤塾に入る2023年4月まで、4カ月ほど続きました。

なぜ工藤塾に入ろうと思ったのでしょうか

Aさん:フリースクールの先生が紹介してくださいました。「理系科目を1人で勉強するのは大変だよ」「一度話を聞きに行ったらどう?」と勧めてくれたんです。最初は独学で進めるつもりだったので、本当に話だけ聞きに行こうかなと考えていました。

でも、実際に来てみると、「勉強に集中するなら、こういった環境がいいな」と感じました。加えて、話を聞くことで、ゴールがより明確になりました。到達しなければいけないラインというのが見えてきたんです。情報が集まってくるのも魅力的でした。

授業料が安い金額ではないので、非常に悩みました。でも、受験は2年くらいが1つの区切りだと思っていたので、最短で受かる方法を考えたときに、工藤塾に入るのがベストだと思い、入塾しました。

実際に入塾して、変化はありましたか

Aさん:今までの勉強はぬるかったなと思いました(笑)。特に数学、化学、物理は、授業についていくのが本当に大変で。「ここまでやらなきゃいけなかったんだ」と思い知らされました。国公立クラスだったのですが、勉強する仲間ができたのが良かったです。今でも連絡を取り合っていますよ。

辛かったことはありますか

Aさん:単純に授業についていくのが辛かったです(笑)。あと、これは再受験生特有なのですが、周りの友人達が、キャリアアップしたり、結婚・出産したりと、人生のステージを進んでいく中で、「自分は何をしているんだろう」ということで、立ち止まっている自分を痛感させられます。下手したらニート扱いですから(笑)。

銀行も、「医学部を受験します」と言って辞めており、「結果を報告しに来いよ」と言われて送り出されてきたので、これで合格できなかったら、みんなに顔向けできないなと(笑)。

得意科目と苦手科目を教えてください

Aさん:工藤塾に入って1年目は、やはり数学、物理、化学に加え、国語も苦手科目でした。得意科目は英語です。小学生のときに、2年半アメリカで暮らしていたので、英語の耐性がありました。高1で英検2級に合格しましたし、現役のときから得意科目でした。

苦手科目を克服するために工夫したことはありますか

Aさん:本当に基本的な参考書からやりました。医学部受験の数学だと青チャートが相場だと思うのですが、私は白チャートをメインでやっていたんですよ。本当に基礎の基礎を、反射的に解けるくらいに仕上げました。

できる問題は3周くらい、できなかった問題は20周とか30周とか、繰り返しやっていました。毎回紙に書いていたわけではなくて、問題のポイントを「これは、こう書いてあるからこうだ」と、「じゃあ間違いやすいところはどこか」というところまで、1分くらいで説明できるようにしました。そういった、口で説明するだけというのも含めての20〜30周です。

工藤塾に入って1年目は、本当に自分の数学、化学、物理をやることだけで、もういっぱいいっぱいという感じでした。なかなか完成度を高めることができませんでした。なので、基礎問題を反射的に解けるようになったのは2年目に入ってからです。

化学は、1年目は『セミナー化学』をひたすら解いていました。2年目に入って、『入門問題精講』というより簡単な参考書をまず1冊仕上げて、次の『基礎問題精講』をやったくらいで、偏差値65くらいまで伸びました。

物理は1年目から『らくらくマスター』を使っていました。本当に公式を使いこなすためだけの参考書です。2年目は、授業で使っていた『名問の森』をひたすら解いていました。

現代文も共通テストで9割取れたので、克服したと言っていいんじゃないでしょうか(笑)。本番1週間前は、ほとんど国語の過去問ばかり解いていました。

古典は、共通テスト1年目は満点、2年目は1問ミスと結果を出すことができました。K先生から「最小限のエネルギーで、最大限の得点を」という方向性で指導していただいたのですが、本当に良い授業でした。

医学部合格に向けた手応えを感じたのは、いつ頃なのでしょうか?

Aさん:工藤塾での1年目が終わって、得点開示を見たときです。合格まで、あと12点くらいだったので。2次試験自体の手応えは、もうボコボコにやられたな、です(笑)。ぜんぜん解き切れた感じがしませんでした。なので、この手応えで12点差なんだと。じゃあ、もう1年やれば合格できると思えました。

国公立の受験は、ほぼ一発勝負です

Aさん:そうなんですよね。ただ、それを考え始めてしまうと、ずるずると不安になってしまうので、とにかく、やることを書き出して、それだけに集中するようにしました。あれもやんなきゃ、これもやんなきゃと考えていると不安になってしまうので、余分なことは考えないようしていました。

山﨑:本番の1週間前は顔が白くて、「大丈夫かな」と思いながら見ていました(苦笑)。

Aさん:本番前の12月末と、2月の中旬に体調を崩したんですよね。本番前で良かったです。

共通テストの1日目は地理からでした

Aさん:いやー、難しかったです。1年目は高得点だったので、余計に「おや?」となりました。カナリア諸島など、問題集を解いていても、まあ出くわさないような地域ばかり出てきたりしたんですよね。推論する力が試されました。「それにしたって、知らんな…」と思いながら解いていました(笑)。ちょっと不安になりましたね。

次の国語は、とにかく時間内に解き終えれば勝ちだと思っていました。本当にそこだけです。最悪、150点くらい取れれば良いと思っていたので。実際にギリギリ解き終えることができました。ただ、古文の最後の選択肢を、魔が差して答えを変えちゃったんです。変えなきゃ良かったと、そればかり考えていました(笑)。案の定、それで8点失いました。悔やまれますね。

英語は、時間が厳しいのは分かっていましたが、そこまで心配はしていなかったです。実際に、見直しの時間も取れ、「これは満点もあるかもしれないぞ」と思っていましたが、1年前より得点が低かったので、ちょっと落ち込みました(苦笑)。

1日目が終わって、すぐに自己採点したとか

Aさん:現役の時から、すぐに自己採点していました。普通は2日目が終わってからすると思うのですが、もう気になっちゃってしょうがない。そっちに頭が行ってしまうので、だったら白黒ついていた方が、気持ちが楽になるので、自己採点しました。かなり得点率が高かったので、気分良く2日目に臨むことができました。

2日目は理科からです

Aさん:物理から解き始めました。物理は、電磁気のコイルの知識が抜けていて、問題をまるまる落としてしまいました。ちょっと苦手な分野だったので、後回しにしてしまいました。物理は90点から70点台もあるぞ思っていたので、想定の範囲内ではありました。

化学は、だいたい85%〜90%取れるようになっていので、安心していたのですが、まさかでした。解き始めると、「これは様子がおかしいぞ」となりました(苦笑)。理論分野の計算に時間がかかるな、ちょっと考えにくいな、という問題が多かったです。当日に、解く順番を変えてやり直してみたら点が取れていたので、少し準備不足でした。

数学ⅠAは、答えなきゃいけない項目を間違えてしまいました。統計の平均値を答える問題で、計算途中の結果を答えにしてしまったんです。癖で、たまにやってしまうんですよね。それが2、3問続いちゃって。答えは分かっていたんですけどね(苦笑)。

数学ⅡBは、そんなに難しさも感じず、落ち着いて解けました。情報も、まあ及第点かなと。

全体では、まあギリギリ許容範囲かなという点数でした。一連のミスがなければ、目標点に近付いたかなという感じです。

そして、2次に臨みます

Aさん:数学以外は良かったです。数学が、1問も完答できなかったんですよね。英語と物理は8割以上取れたと思います。物理は、共通テストが終わった後、「これじゃいかん」ということで、勉強をやり直しました。なので、物理は最後の最後まで伸びましたね。

化学も、分からないところもけっこうあったんですけど、とは言え、他のところで補って合格者平均くらいは取れているなという印象でした。ですので、数学がどこまで足を引っ張っているか、という状況でした。解答欄は埋めるだけ埋めるようにはしました。

面接の手応えはありましたか?

Aさん:面接は自信なかったです。「なぜ再受験に至ったのか」「何科を志望するのか」や、自己紹介書からの質問がありました。グループ面接は、特に問題は無かったのですが、ディベートの方で失敗してしまったかなと感じています。

テーマは「直美について是か非か」で、私は反対の立場で話すことになったのですが、ちょっと論点がズレた発言をしてしまったかなと、後から考えて思いました。

帰りのバスで、同じ面接を受けた人たちと話す機会があったのですが、それが超名門高校出身者ばかりで、「この人たちに勝てるんだろうか」と落ち込みました(笑)。

山﨑:次の日くらいに報告に来てくれましたが、顔がまた白くなっていました(笑)。

合格発表はどこで確認しましたか

Aさん:自宅の自分の部屋で、1人で確認しました。合格が分かったときは、思わず叫びました。全身の血が逆流するような感じでした。かーっと身体が熱くなりましたし、震えてしまって、なかなか家族に報告のLINEが打てませんでした(笑)。

印象に残っている先生はいますか

Aさん:どの先生も印象に残っていますよ。特に福屋先生は、話す中で考え方を吸収できたことが、すごく良かったです。物理と化学を教えていただいたのですが、福屋先生と話すときは、自分の使っている言葉1つ1つに気を遣わなければいけないので、言葉の定義を分かっているか、正しい使い方をしているか、すごく注意するようになりました。

言葉の定義が曖昧だと「何を言っているの」で終わってしまうので(笑)。でも、それが勉強になったというか。言葉1つ1つについて考える癖をつけることができたので良かったです。なので、質問する内容を自分でまとめているうちに解決するということもありました。

数学の阿部先生とは、情報交換をよくしていました。すごく受験情報に詳しいので、勉強法だったり、参考書について、相談に乗ってもらっていました。入試問題にも詳しいので、志望校別の対策なども聞いていました。

英語も、基礎からスパルタで指導していただいたので、確実にレベルアップしました。なんとなく読めるという状態から、正確に読めるようになるまで、鍛えていただきました。実際の入試でも、安定して得点することができました。

医学部再受験を検討している方に伝えたいことはありますか

Aさん:私は、ありがたいことに、周囲の方たちに助けていただきながら、なんとか合格できました。でも、安易には勧められないですね。相当な手応えを感じてからじゃないと、やるべきではないと思います。それでもやる決断をしたのであれば、基礎基本の徹底と、勉強量の確保は、絶対に必要だと思います。

そのうえで、状況が許すのであれば、予備校など専門家の力を借りることで、合格までにかかる期間を短縮できると思います。